1. 賢い患者として納得した治療・人生の送り方

Special Interview

認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLコムル 理事長山口 育子さん

賢い患者として納得した治療・人生の送り方

患者が自分にとって“最良”の治療を、納得して受けるためには、患者が主体的に医療に参加したり、少しの努力や働きかけを行ったりすることも必要なのかもしれません。そこで、がん経験者であり、医療関係者に対する教育活動も行っていらっしゃる、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長 山口 育子 さんに、患者さんの側から考える医療コミュニケーション、賢い患者になるためのヒント、医療関係者と良好な関係を築くためのヒント、および理想の協働的意思決定についてうかがいました。

認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長山口 育子 さん

医療関係者と良好な関係を築くために

患者の側もコミュニケーション能力を高める努力を

私は患者の一人として、医療関係者には高いコミュニケーション能力を期待したいです。
同時に、患者さんの側もコミュニケーション能力を高めることが重要だと思っています。例えば、医療関係者から受けた説明でわからないことがあったら、聞き流さずに、「どういうことですか」と、きちんと質問して理解を深める必要があると思います。質問という形でなくても、ある程度説明が終わったら、自分が理解した内容を自分の言葉に置き換えて、「今説明いただいた治療を受けたら、これぐらいの効果があると期待したのですが、それで問題ないですか」というふうに、確認することでもよいと思います。

わからないことをそのままにしておいてはいけない背景の一つに、現在の医療は高度化・複雑化していて、治療の内容が難しくなってきていることがあります。現在では、インフォームド・コンセントという概念が浸透していて、医療関係者は患者に十分に説明することになっていますが、中には、難しい内容を難しい言葉のまま患者に説明する医師がいるかもしれません。このような場合に、もし患者さんがわからないことをそのままにしていたら、自分の大切な病気・治療について理解できないまま治療を受けることになり、「こんなはずではなかった」ということになるかもしれません。納得して治療を受けるためには、患者の側にも努力が求められていると思っています。

質問しにくいときは、質問の仕方・話し方を工夫して

医療関係者の説明を理解していないのに、「理解できないと思われるのが悔しいから」「聞き方がわからないから」と、「わかる」とうなずいてしまうのは、よくないことです。
例えば、⼿術の説明を受けたときに、⼿術による合併症の説明がよくわからなかったとします。最後に質問があるかと聞かれて、「合併症には何があるのですか」と質問したとしたら、「さっき⾔ったじゃないか」という顔をされるかもしれません。ですが、例えば、「さっき合併症の説明をしてくださいましたが、よくわからなかったので、もう⼀度お話しいただけませんか」と⾔ったら、嫌な顔はされないと思います。きちんと聞いていたけど理解できなかった。だから、もう⼀度説明してほしい、という思いが伝わるからです。
このように、話し方や言葉選びに少し気をつけるだけで、医療関係者との関係性が良好になり、医療関係者から聞きたい情報を聞き出せるようになるのではないかと思います。

私は、医療コミュニケーションは、日常コミュニケーションの上級編・応用編だと思っています。医療関係者との会話では、専門用語が飛び交いますし、緊張もします。また、余命わずかといったような厳しい現実を突き付けられることもあるでしょう。このような状況で、日常生活で良好なコミュニケーションを行えない人が、医療関係者の前で上手にコミュニケーションすることができるはずがありません。日常のコミュニケーションスキルを磨いておくことも、医療関係者との関係性を良好に保つことにつながるのではないかと思います。

(公開:2021年3月)